トラックボールのベアリング支持は、ボールを軽く動かしたい人の購入候補です。ただし、軽く動くことと、狙った位置で止めやすいことは別の話。人工ルビー支持との比較レビューでは、動かし始めの軽さに加え、指を離す際の小さな動きにも反応する違いが報告されています。
新しく買うなら、支持方式と一緒に接続方法やボタン機能を選びましょう。すでに交換対応のエレコム製トラックボールを持っているなら、支持ユニットだけを交換する方法もあります。この記事では、ベアリングとほかの支持方式の違いから、搭載機の選び方、対応型番、交換・掃除の順に説明します。
- ベアリング・人工ルビー・ボールローラーの支持方式の違い
- 動かし始めの軽さと、狙った位置での止めやすさ
- 搭載機の接続機能と交換ユニットの対応型番
- メーカーの説明に沿った交換とボールの清掃
トラックボールのベアリング支持とは?違いと選び方
ベアリングはボールを支える部品。人工ルビー・ボールローラーとの違い

ここでいうベアリングは、親指で触る大きなボールを内側から支える部品です。エレコムのISTシリーズには、この支持部分にミネベアミツミ製のベアリングを採用したモデルがあります。「交換ボール」と「交換用ベアリングユニット」は別の部品なので、購入時は取り違えないようにしましょう。
| 支持方式 | 支え方・特徴 | 比較するときの着眼点 |
|---|---|---|
| ベアリング | ボールの支持部分にベアリングを採用。エレコムは摩擦による抵抗の低減を説明 | 動かし始めの軽さと、指先に伝わる感触 |
| 人工ルビー | 小さな人工ルビーの部品でボールを支持 | 動かし始めの抵抗と、指を離したときの止まり方 |
| ボールローラー | IST PLUSでは、360度自在に回転するボールで支持 | ベアリングとは異なる構造による操作感 |
ボールローラーも、メーカーが摩擦抵抗の低減となめらかな操球感を説明している方式です。つまり、なめらかさを求める場合の候補はベアリングだけではありません。
IST PLUSではベアリングモデルとボールローラーモデルが分かれているため、「IST PLUS」というシリーズ名だけで支持方式を決めつけず、商品名と仕様欄を見て選びます。
軽く動くメリットと、細かな位置で止めるときの注意点
ベアリング支持の魅力は、摩擦による抵抗を減らした操作の軽さです。エレコムはIST PLUSのベアリングモデルについて、「空中に浮いているような」なめらかな操球と説明しています。これはメーカーによる操作感の表現であり、ボールが実際に浮く仕組みという意味ではありません。
使い分けの参考になるのが、ITmediaによる2023年発売のISTの比較です。同記事の筆者は、人工ルビー支持では動かし始めに多少の力が必要な一方、指を離すとカーソルがその位置で止まると評価。
ベアリング支持では動かし始めにほとんど力が要らず、操作への追従性が高いものの、指を離す衝撃でもカーソルが動き、狙った場所で止めるには慣れが必要だったと述べています。
この比較からは、軽さを重視するならベアリング、指を離したときの止まり方を重視するなら人工ルビーも検討する、という選び方ができます。ただし、これは当該ISTを使った筆者の評価です。すべての製品や人に同じ結果が出るという保証ではなく、支持方式を比べる際の観点として捉えてください。
操作感を試せるなら、大きく転がすだけでなく、小さく動かして指を離すところまで確かめたいですね。動かし始めが気持ちよくても、止める際の感覚が好みに合うとは限りません。私は、軽さだけで順位を決めるより、この二つを分けて選ぶほうが納得しやすいと思います。
指先の感触と回転音は、クリックの静音性と分けて考える

ベアリング支持は、軽く動く一方で、部品を回している感触が指に伝わる場合があります。ITmediaのISTレビューでも、人工ルビーとは異なる、機械を操作しているような感触が述べられています。メーカーの「なめらか」という説明から、指先への感触までなくなると想像すると、期待との違いが生まれそうです。
音については、まず何の音を指しているかを分けましょう。IST PLUSのベアリングモデルは、左右ボタンに加え、左右以外のボタンにも静音タイプのスイッチを採用しています。この説明が対象にしているのはボタンのスイッチです。
「静音スイッチ搭載」という表記だけでは、ボールの回転音まで静かだとは判断できません。
静かな環境で使うことを重視するなら、ボタンを押した音とボールを転がした音を別々に確かめるのがよいでしょう。また、指先に伝わる感触の好みと、音の気になり方も別の判断です。ベアリング方式という理由だけで音の大きさを一律に決めたり、回転音だけから故障と決めつけたりはできません。
搭載機を買うなら、IST PLUSとISTの接続・機能を比較する
購入候補として比較するのは、エレコムの「トラックボール“IST PLUS”(親指操作タイプ)ベアリング」M-IT11MRSBKと、「Bluetooth5.0トラックボール “IST”5ボタン ベアリングモデル」M-IT11BRBKです。
どちらも親指操作のベアリング支持モデルですが、接続方法と設定機能に違いがあります。
| 比較項目 | IST PLUS M-IT11MRSBK | IST M-IT11BRBK |
|---|---|---|
| 接続方式 | Bluetooth/USB無線2.4GHz | Bluetooth |
| ボタン数 | 5個。ホイールボタンを含む | 5個。ホイールボタンを含む |
| センサー分解能 | 初期値500DPI。専用ソフトで100〜4000DPIに設定可能 | 仕様欄は500DPI |
| ボール径 | 直径約36mm | 直径約36mm |
| 本体寸法 | 幅約96×奥行約126×高さ約52mm | 幅約96×奥行約126×高さ約52mm |
| 電源 | 単3形アルカリ・マンガン乾電池、ニッケル水素二次電池のいずれか1本 | 単3形アルカリ・マンガン乾電池、ニッケル水素二次電池のいずれか1本 |
複数の機器を切り替えて使いたいなら、IST PLUSが候補です。最大3台を登録でき、本体側面のボタンで接続先を切り替えられます。初期設定はCH1・CH2がBluetooth、CH3がUSB無線2.4GHz。
CH1・CH2でもUSB無線を使う場合は、追加のELECOM Bridge E USBレシーバーと、エレコム マウスアシスタントでの設定が必要です。3台分のUSBレシーバーが付属するわけではありません。
IST PLUSには、ボタンの機能割り当てなどを本体に保存するオンボードメモリもあります。保存できるのは3つのプロファイル、つまり設定セット。接続先を変えても同じ設定で使えるのが特徴です。
ただし、機能割り当ての設定には無料のエレコム マウスアシスタントが必要で、このソフトはiOS・iPadOS・ChromeOS・Androidには対応していません。本体を接続できるOSと、設定ソフトを使えるOSは区別しましょう。
Bluetooth接続で使うなら、ISTのM-IT11BRBKも比較対象になります。
Bluetooth HOGPに対応するパソコンでは、USBレシーバーを挿さずに使用できます。
なお、正式な製品名には「Bluetooth5.0」とありますが、製品ページと公式販売ページの仕様欄は「Bluetooth 5.3 Class2」という記載です。Bluetoothの規格を購入条件にする場合は、この表記差を踏まえてメーカーへ確認してください。
トラックボールのベアリング交換・掃除の進め方
手持ち機種を交換できるかは、シリーズ名より型番で確認する
交換用ベアリングユニットM-BS10は、エレコム製トラックボールの対応機種向けパーツです。メーカーは購入前に対応表を確認するよう案内しています。「同じエレコム製」「ボールの大きさが似ている」という理由だけでは適合を判断できません。手持ちの型番と、公式の対応機種一覧を照合しましょう。
| シリーズ | 公式の交換支持ユニット対応機種一覧に掲載されている型番・型番群 |
|---|---|
| IST・有線 | M-IT10UR/M-IT11URシリーズ |
| IST・USB無線2.4GHz | M-IT10DR/M-IT11DRシリーズ |
| IST・Bluetooth | M-IT10BR/M-IT11BRシリーズ |
| IST PLUS | M-IT10MRS/M-IT11MRSシリーズ |
| IST PRO | M-IPT10MRSシリーズ |
| HUGE PLUS | M-HT1MRBK |
上表は2026年10月3日に確認した掲載内容です。型番の文字が似ていても、IST・IST PLUS・IST PROは分けて照合します。HUGEについても、ここに掲載されているのはHUGE PLUSのM-HT1MRBKです。シリーズ名の一部を省いて、ほかの機種まで対応すると広げないことが大切です。
手持ち機種が表に見当たらない場合は、互換性を推測して購入せず、エレコムの交換支持ユニット対応機種一覧で対象型番を確認します。本体を買い替える前に支持方式を試せるのは、交換対応機種ならではの選択肢です。
交換用M-BS10の内容物と、人工ルビーへ戻す選択肢


ベアリングへ交換するための部品は、エレコムの「トラックボール用交換パーツ(ベアリング支持ユニット)」M-BS10です。内容物はベアリングユニット3個と取り外しツール1個。専用ツールも含まれるため、ユニットだけの単品販売と思って別の工具を探す必要はありません。
取扱説明書でも同じ内容物が案内されています。


エレコム トラックボール用交換パーツ(ベアリング支持ユニット) M-BS10 を探す
反対に、ベアリングの感触が好みに合わず人工ルビー支持へ変更したい場合は、「トラックボール用交換パーツ(人工ルビー支持ユニット)」M-RS10が候補です。こちらも人工ルビーユニット3個と取り外しツール1個の構成。メーカーは、ベアリングモデルとの交換が可能と説明しています。
IST PLUSのM-IT11MRSBKには取り外しツールが付属しますが、交換用の支持ユニットは別売です。本体の付属品と、交換パーツの内容物を分けて見ると、追加購入するものがはっきりします。
対応する本体を持っている人は、操作感を変えるためにトラックボール本体を丸ごと買い直す前に、支持ユニットの交換を検討できます。
交換は専用ツールで行い、光学式センサーを傷つけない
M-BS10の取扱説明書は、M-IT11シリーズのイラストで交換方法を説明しています。IST PLUSのM-IT11MRSシリーズの説明書にも同じ流れが掲載されています。作業で特に注意したいのは、内側のセンサーを傷つけないこと。メーカーが案内する支持ユニットの着脱手順に沿って進めます。
- 指、またはペンなどで裏側からボールを押し出します。
- 取り外しツールを指でつまみ、交換する支持ユニットの溝へ、カチッと音がするまで挿し込みます。
- ツールを指で強くつまんで引き抜き、支持ユニットを取り外します。
- 新しい支持ユニットを、内側の爪に引っかかるように置きます。
- カチッと音がするまで指などで押さえ、支持ユニットをはめ込みます。
- ボールを本体に戻します。
ボールの取り外しでは、先が尖ったものを使わず、落下させないようにします。エレコムの公式FAQは、どちらもボール表面を傷つける可能性があると注意しています。支持ユニットの溝とツールの位置は、M-BS10の日本語取扱説明書の図も見ながら合わせてください。
なお、説明書で案内される支持ユニット交換と、本体を分解して修理する作業は区別が必要です。IST PLUSの説明書は、自分で本体やレシーバーを分解・改造・修理しないよう警告しています。交換のために本体内部まで分解する手順へ進めないでください。
動きが悪いときの掃除と、アルコール・注油・水洗いの考え方


エレコムはベアリング支持について、ボール表面を擦らず、支持部分にゴミが集まりにくいため、長期間メンテナンスフリーで使えると説明しています。一方、IST PLUSの説明書にはボールと支持ユニット接触面の清掃方法も掲載されています。
「ゴミが集まりにくい」という特徴と、汚れがあるときのお手入れは両立するものです。
- 裏側からボールを押し出します。
- 綿棒などで、3カ所の支持ユニット接触面にたまったホコリを取り除きます。
- ボールの汚れをティッシュなどで軽く拭き取ります。
- ボールを本体に戻します。
この手順はIST PLUSのM-IT11MRSシリーズ向けです。説明書は、光学式センサーに衝撃を与えたり傷をつけたりしないことに加え、ボールの清掃にアルコールやクリーニングクロスを使わないよう案内しています。ボール表面の油分がなくなると、操作感が悪くなる原因になるためです。
本体外装の消毒案内を、そのままボールの清掃へ当てはめないでください。
ボール表面の油分が不足して操作感が悪い場合、同シリーズの説明書は、手で30秒ほどボールを揉む方法を案内しています。これはボール表面についての説明で、ベアリング内部へ潤滑剤を注す指示ではありません。
製品本体への液体の直接噴射も禁止されているため、動きを軽くしようとスプレーを吹きかけることは避けましょう。
エレコムの一般向けFAQには、柔らかい布で拭いたあと、手のひらで1〜2分ほど転がす案内もあります。M-IT11MRSシリーズの説明書とは、拭く道具や時間が異なります。この機種では、ティッシュなどで軽く拭き、必要に応じて30秒ほど揉むという、機種別説明書の手順に沿うのがよいでしょう。
水洗いの情報も部品ごとに区別します。メーカーが水やお湯で丸洗いできると説明しているのは、交換用ボールローラー支持ユニットM-TU03SSです。流水では部品を紛失するおそれがあるとの注意も付いています。
この案内をベアリングユニットM-BS10やトラックボール本体へ広げて、水洗い可能と考えないでください。
ボール自体は回るのにポインターの動作が不安定な場合は、支持部の汚れだけを原因と決めつけないことも大切です。IST PLUSの説明書は、電池の残量や向き、Bluetoothの接続状態なども確認項目に挙げています。
清掃後も改善しないときは、機種別説明書のトラブルシューティングに沿って確認し、独自の分解修理には進めないようにしましょう。
トラックボールのベアリング選び・交換・掃除のまとめ
この記事のまとめです。
- ベアリングは大きな操作ボールを支える部品。交換ボールとは別のパーツです。
- 人工ルビーやボールローラーも比較対象。なめらかさを求める場合の候補はベアリングだけではありません。
- ISTの比較レビューでは、ベアリングの動かし始めは軽い一方、狙った位置で止めるには慣れが必要だったと報告されています。
- ボタンの静音スイッチとボールの回転音は別の判断。指先の感触も含めて比べましょう。
- IST PLUSのM-IT11MRSBKはBluetoothとUSB無線2.4GHzに対応し、最大3台を登録可能。追加のUSB無線接続には別のレシーバーと設定が必要です。
- IST PLUSは3つの設定セットを本体に保存可能。ただし、設定用ソフトはiOS・iPadOS・ChromeOS・Androidには対応していません。
- 支持ユニットの適合は型番で確認。ISTやHUGEという名前だけで対応範囲を広げないことが大切です。
- M-BS10はベアリングユニット3個と取り外しツール1個の構成。人工ルビーへ変更する対応パーツはM-RS10です。
- 交換は専用ツールと説明書の手順で行い、ボールとセンサーを傷つけないようにします。
- M-IT11MRSシリーズのボールはティッシュなどで軽く拭き、アルコールやクリーニングクロスは使わない案内。油分不足時は手で30秒ほど揉む方法が示されています。
- ボールローラー支持ユニットの水洗い案内を、ベアリングや本体に当てはめないでください。動作不安定時は電池や接続も確認します。
参考にした情報
- トラックボール用交換パーツ(ベアリング支持ユニット) – M-BS10
- トラックボール用 交換支持ユニット 対応機種一覧 – 対応表・動作検証 エレコム株式会社
- ベアリングを搭載し、滑らかな操作感を実現した 「握らないトラックボール」が誕生 約4年ぶりのトラックボール新シリーズ「IST(イスト)」を新発売 | エレコム株式会社 ELECOM
- Bluetooth5.0トラックボール
- ボールベアリングを使ったトラックボールはなぜ心地よいのか ベアリング製造元に聞く:分かりにくいけれど面白いモノたち(1/5 ページ) – ITmedia NEWS
- トラックボール“IST PLUS”(親指操作タイプ)ベアリング – M-IT11MRSBK
- ユーザーズマニュアル – トラックボール“IST PLUS”(親指操作タイプ)[ベアリング支持モデル] M-IT11MRSシリーズ | エレコム株式会社 ELECOM
- トラックボール用交換パーツ(人工ルビー支持ユニット) – M-RS10
- 清掃を行ってもトラックボールの動きが悪い・ひっかかる
- ユーザーズマニュアル – 交換用ベアリング支持ユニット M-BS10 | エレコム株式会社 ELECOM
- トラックボール“IST PLUS”(親指操作タイプ)ボールローラー – M-IT10MRSBK
- トラックボール用交換パーツ(ボールローラー支持ユニット) – M-TU03SS
- Bluetooth5.0トラックボール ”IST”5ボタン ベアリングモデル | エレコムダイレクトショップ本店はPC周辺機器メーカー「ELECOM」の直営通販サイト











